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『三千円の使いかた』はドラマにもなった人気小説です。節約のハウツー本でもエッセイでもないけれど、貯蓄のモチベーションが上がる物語となっております。
小説プロフィール
発行日:2018年4月25日
著者:原田ひ香
2023年にドラマ化
登場人物
名前(ドラマ版キャスト)
◆御厨美帆(葵わかな)
憧れの一人暮らしを満喫していた御厨家の次女。
◆井戸真帆(山崎紘菜)
美帆の姉。証券会社に勤めていたが、夫の太陽との結婚を機に退職して専業主婦に。娘の佐帆と3人暮らし。
◆御厨琴子(中尾ミエ)
美帆と真帆の祖母。和彦の母。園芸が趣味。若いころはデパートで接客業をしていた。
◆御厨智子(森尾由美)
美帆と真帆の母。更年期障害に悩まされている。
◆御厨和彦(利重剛)
美帆と真帆の父。口数が少なく、気が利かない。
◆小森安生(橋本淳)
琴子と園芸コーナーで知り合い、意気投合。家の留守中に庭の世話を琴子に頼んでいる。
◆黒船スーコ(アンミカ)
テレビや講演など、積極的に活動する人気のファイナンシャルプランナー。
◆沼田翔平(葉山奨之)
スーコの講座で美帆と顔見知りになる青年。デザイン系の学校を出ている。
各話のあらすじ
第1話 三千円の使いかた
主人公:美帆
信頼する先輩が会社からリストラされ、自分はこのままでも大丈夫なのかと不安になりはじめていた。恋人との関係も冷めており、終わりを予感している。
そんな中、美帆は保護犬と出会い、心の奥に押し込んでいた悲しい記憶を思い出す。そして自分の本当の夢と向き合うことにしたのだが…。
第2話 七十三歳のハローワーク
主人公:琴子
夫の遺産の金利だけで念願のマッサージチェアをGETした節約上手。しかし目標達成後は節約に楽しみを見いだせないでいた琴子。
ある日、嫁の智子に頼まれてお料理教室の先生になり、謝礼として五千円を貰う。それにより働いてお金を貰うことの素晴らしさを思い出して再就職を目指すのだが……
第3話 目指せ!貯金一千万!
主人公:真帆
稼ぎは多くないがイケメンで優しい夫と、可愛い娘と暮らす真帆。マイホームの頭金や娘の学費のために1千万円を目指して節約に励む日々を送っていた。
慎ましいながらも幸せに暮らす真帆だったが、友人が玉の輿に乗ったことで蓋をしていた不満が沸々と沸き上がる。
第4話 費用対効果
主人公:安生
自由人の安生は、少しでもお金が貯まれば海外旅行に足を運び、お金がなければ遠征のバイトで食いつないでいた。
そんな安生にも恋人がいる。インドで知り合ったライターの<きなり>とは、長い付き合いだ。きなりは子供が欲しいと訴えたが、安生は逃げてしまう。しかも逃げた先で浮気をしてしまい、きなりと別れることに。
きなりと復縁したいが、父親になる自信がない安生が選んだ道とは──。
第5話 熟年離婚の経済学
主人公:智子
ガンで入院をしたことを機に、体の不調が気になりだした智子。特に智子を悩ませたのが更年期障害だ。
夫の些細なことでイライラしてしまう智子は、「このままでいいのか?死ぬまで夫のためにご飯を作り続けなければならないのか?」と不満を募らせていく。
悩んだ末に智子は、離婚したばかりの友人の千さとと一緒に黒船スーコのカウンセリングを受けることにした。
第6話 節約家の人々
主人公:美帆
スーコの講座で出会った青年、翔平と交際を始めた美帆。結婚を考えていた矢先、翔平に奨学金の返済義務があることを知る。金額は450万。利息を含めればもっと金額は増える。
ローンの重さに、美帆と翔平の間で大きな亀裂が生じてしまう。果たして美帆はどの道を選ぶのか。
ドラマ版との比較
ストーリーの違い
原作の小説とドラマでは、人物の設定や大まかなストーリーはあまり変わりません。ただ、原作にはない話が加わっていたり、多少の変更はありました。
しかし私は許容範囲かなと思っています。と言いますのも、ドラマはドラマで、うまくまとまっているんです。なので、ドラマ版は「小説の映像化」として見るのではなく、「小説の設定を借りた別の話」として見るといいかもしれません。
どちらがおすすめ?
どちらとも見るなら、ドラマが先のほうがおすすめです。役者さんの顔や声、家などを知っておくことで小説を読んだときのリアリティがグッと高まりますし、ドラマでは表現しきれなかった登場人物の心情が文章により深掘りできます。
逆に原作を先に見てしまうと、ドラマのオリジナル部分をマイナスに捉えてしまいかねません。
なので、どちらかしか見ないのであれば小説を、両方楽しむつもりならドラマ版から…というのがおすすめです♪
感想
本当にこのままでいいのか?を突きつけてくる
将来が見えない不安、盤石とは言い切れない老後生活、友人との格差、浮世離れした金銭感覚、夫婦関係、恋人の借金……登場人物それぞれが抱える問題と向き合います。
私の場合、境遇が似ていた真帆の話に深く感情移入しました。真帆の不安や不満が痛いほどよくわかるんです。思わず何度も頷きました。
でも真帆には、不安を払拭してくれるイケメン消防士の旦那さんがいるんですよ…こればかりは共感できませんでした(笑)
でも真帆のほうにしっかり現実と向き合う逞しさを身に着けたいと思いました。
テーマの本幹はお金ではない
お金の不安からスタートするので、お金がテーマなのは間違いないです。けれど物語は、お金が理想の生活を運んでくるのではなく、働く喜び、家族の愛、本当の夢の先にお金があるのだと気づかせてくれます。

読みやすさ
難しい言葉が使われてなくて読みやすいです。
主人公が章ごとに変わりますが、三人称に統一されているのも読みやすいと感じました。
しかし、場面が変わる区切りが目立たないなと感じました。いつの間にかシーンが変わっているんです。心理描写はとても細かく書いてあるのですが、情景に対する描写が少ない気がします。
想像の余地が多いと言えば聞こえがいいのですが、なんとなく台本っぽいなと感じていました。のちに作者が脚本家だと知って、すごく納得しました。
私の人生がガラリと変わった
私はドラマ経由でこのお話を知ったのですが、控えめに言って人生が変わりました。
当時貧乏だった私は、ただケチケチ節約していました。あの頃は心もだいぶ荒んでたな…。もちろん自分のお小遣いなんてありません。食費が予算内に収まったら自分へのご褒美としてお菓子を少し買うくらいでした。
ドラマを見て心を動かされた私は、小説も読み、そして「一ヶ月に3000円だけ自由に使えるとしたら?」と考えるようになりました。それから生活が一変したのです。
ただお菓子や本に消費するのは勿体ない。三千円あったら何ができるのかと考え始めました。たとえば、将来に役立ちそうな本が2冊買える。映画館で好きな映画が見れる。気になる展覧会だって行ける──
このように、三千円って本当にすごい可能性があるんです。私はこれからも三千円の使いかたを意識していきたいと思っています。



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